フェアリー

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イギリスでは、妖精がよく話に出てきます。朝の日差しをあび外に出て来たジョン。

さあ、フェアリー達、ジョンを驚かしてみよう!
 

 さて、こちらは寝癖がまだ直ってないジョン。いつものようにハーブに水をやります(あと、3日で飲めそう)。長い髪を掻き揚げつつ、鉢の前でしゃがみ込みました。可愛い蛙のジョウロで心を込めて育てたハーブに、根元の方から水をやり、葉や花に水が掛からないよう注意しながら掛けていると、見たことのある顔が目の前をヒラヒラと飛んでいました。それは、黒の闇を思わせる髪・茶色の目。濃い顔。ダイヤ柄のバレーの服。マイクスタンドを片手に、背には蝶の様な羽根を付けていました。
 何より出っ張った歯が、これがフレディ似のフェアリーであることは確定でき、ジョンはまだ夢を見ているのかと、目を擦りましたが、それは消えてくれないどころか、頭の上に乗っかって眠りだしました。
 う〜ん困ったなぁ、と思いつつ、また水を掛けだし、今度は、雑草をハーブの栄養を奪わないように抜きます。
  登校途中のティーンエンジャーがが『アブラハムの子(?)』を歌っていたので、ジョンも鼻歌まじりで歌詞を思い出しながら佇んでいました。

♪アブラハムには七人の子っ一人はノッポであとはチビ♪
ん?

 と、今度は『セサミストー○ー』の”ビッグバード(黄色くてバカでかいトリ)”を思わせるボンッバタ濃い焦げ茶の髪に、ヒョロッと伸びた体。長い足が絡まりそうなブライアン似のフェアリーがハーブの横で、レッドスペシャルを抱えてじっとこちらを見ています。
 (え〜とぉ…。)すっかり混乱しているジョンは、トンボみたいな羽根したブライアンを手に乗せて、どうしたいのか聞きました。
 ブライアン本人より遥かに甲高い声で眠りたいと言い、ジョンの頭を指差しました。苦笑しながら頭に乗せてあげました。

(ちょっと重くなったなぁ)

 さてと、と一息ついて肥料を持ってきてパラパラと、指で潰しながら蒔いていると、何故か嫌な予感がします。ふっと、頭を起こすと、ニカッと、歯並びのいい白い歯を見せて、片っぽづつに握ったスティックをクルクル回しつつ、鉢の隅っちょをコツコツ叩きながら、青い目で見てきます。               

あぁぁぁ……。

 悩んだ末にそのロジャ―似のフェアリーを呼んでみると、ド派手なオオムラサキ(国蝶)みたいな羽根でフラフラ飛んで来て、ジョンの鼻先をペチッと叩きフレディ&ブライアン似のフェアリー達の元へ飛んで行きました。(ますます重くなったよう…)←失礼。                                
 手を洗いに家に入ると、自分似のフェアリーが蛇口の上でお茶を啜っているではありませんか!
 ジョンの頭は混乱を通り過ぎ、落ち着きを取り戻しました。
 そのジョン’はニコニコしながら、高いけど鼻にかかった声で「僕の仲間は何処?」と、早口で尋ねます。負けず劣らず早口、アヒルの様な声で頭を指差しつつ「ここだけど重いからね、眠りたいならこっちへおいで」誘導しつつ四つの小物入れにそれぞれハンカチを敷き、枕元の上に置きました。即席ベッドの出来上がり。
 じゃあ、ここで寝てね。と、緑色の小物入れに寝かせ、タオル地のハンカチを掛けてあげました。それから紫の小物入れに、フレディ’フェアリー、赤い小物入れにはブライアン’フェアリー、そして最後にロジャ―’フェアリーを寝かせ、そーっと部屋をあとにしました。(ちなみにロジャ―’フェアリーは金の小物入れ)
 その日の深夜三時、ジョンは不審な物音で目が覚めました。寝惚け眼で音のする方向を見てみると、寝ていたフェアリー達がいつの間にか起き出していました。そして、四匹(?)協力して、幾何学模様のシャツを作っています。(あはは〜面白いシャツの柄だなぁ)と、思ったのもつかの間で、すぐにそのまま眠ってしまいました。
 翌朝彼が目覚めたら、フェアリー達の代わりにあのシャツがきちんと折り畳まれておいてありました。

(ガリバー気分だ)

 フフッと笑って、試しにそのシャツを着てみることにしました。その贈り物は、彼の体のために作られているかのように、ぴったりと彼の体に合いました。
 (すごいや!)ニコニコしながら鏡の前へ行くと、はっと気付きました。僕の体にミラクルフィットしているってことは…。
 どんどん顔が真っ赤になっていき、「誰かが僕を裸にして測ったんだ!いったい誰が?何もされてない、うん、考えちゃだめ!
 これは、彼等にしてやられたな!と、額に手を当て、クスクス笑い出して、春だものなと、一人納得するジョンでした。

END

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