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 一通のメールから物語は始まる。

 

 ジョンのパソコンのメールフォーム、2004年11月17日、

タイトルには"天国から来た手紙"とだけ書いてある。受信された本文にはこう書いてあった。

 

愛しいディーキーへ。
ようやく君にこのメールを出す事が許されたんだ。

とても嬉しくって、そして懐かしいよ。
君の笑顔とベースのしらべをセットにして、今の僕に聴かせて欲しいな。
ではまたね。

F

 

 ジョンが、メールを見て不思議そうな顔をして場面にかじりついていると、電話がかかってきた。
 それはロジャーからだった。
「もしもし、ジョンです。」
『よージョン、メール見たぜ!あんないたずらする奴だっけか?お前。それよかさあ、最近、日本の東芝EMIがんばって俺達売ってるぜ。さすがQUEENの人気が逸早くついた国”日本”って感じだよな。』
「えーと、非常に言いにくいけれど、最近君にメール送って無いよ。そのメールって、最後に"F"って付いていた?」
『へ?あーおい、一寸待てよ…、有ったコレだ。ああ、お前の行った通り、"F"って最後に書き添えてあるな。F、ねえ。フレディの名前名乗って、俺らの返事貰いたがってるんじゃねーのか?』
「う~ん、そうかもね。仕事がんばって。」
『おうよ!任せな。お前と違って俺は現役だからな。ハハハ。じゃあまた。』
「うん、またね。」
 電話を切るとすぐに又電話が鳴る。今度はブライアンから。
『はろ~、ジョン。メール見たよ。そろそろ僕達とバンド再会しようじゃないか。それから、あのWWRYのミュージカル!あれはいい出来だよ!そう思うだろう?それとさあ、君の今の顔が見たいって言う女性のファンからのメールが凄くてね。一度三人で写真取らないかい?』
「ちょ、っちょちょちょ!一寸、待って、僕、ロジャーにも君にも最近メール出して無いし、メールアドレス違うはずだよ。それから、最後に"F"って付いていたでしょう?」
『うん。そうだね、おかしいとは思ったんだ。でも誰が?』
「さっきロジャーが電話掛けてきたから話してたけれど、フレディを装ったファンの仕業じゃないのかな?と言ってたよ。」
『う~んそうか。フレディは偉大な事をやり遂げた男だ。喧嘩もしたけれど、いい奴だったよなぁ~。』
「うん、彼はもう”伝説のチャンピオン”さ!」
『それにしても、誰がそんないたずらを?もしかしたら、ファンが僕らを慰めのためにメールをよこしたのかもしれないな。』
「うん、そうかもね。でも、いたずらだったらやり過ぎだよ」
『だから、心優しい少女なんかが、ほら、おじ様たちを元気付けようとメールをくれたんだよ!』
「………あのねー…話がそれてきてるよ。」
『そうかい?いつものクセさ。ーあ、キャッチホン!ごめん、また電話するよ、じゃあね。』
ガチャ。
「…急がしそうだなブライアン」
 ふ、と溜息を一つ。紅茶を口に流し込み、パソコンの電源を切った。

そういえば、あと一週間か。


フレディ、僕らは君の最期を看取る事が出来なかった。
君は今どうしているんだい?
僕は君が居なきゃ本当の"QUEEN”は戻ってこないと、そう信じている。でも、がんばる二人を見ていると、励ましたくなるんだ。とても。
でもね。
僕は僕なりの信念を曲げない。だから参加は出来ない。
でも、この信念がいつまで持つか僕にも分からないんだ。
辛いよ。とても。
君が去ってしまった時少し僕は、捻くれていたのかもしれない。君の事ずるいと思ったんだ。これからも多分、頭の片隅で思っているんだろうね。
そして、君に出会っていなかった頃の自分には戻れないのは解っているけれど、必死に戻ろうとしている自分がいるよ。
君にあってから、僕の人生はずいぶん変わってしまったんだって、しみじみ思うんだ。
あの、多忙で、苦しくて、嬉しくて、たまらなく不安で、興奮的かつ、冷静でいて、寂しい、僕らQUEENの時代は、もう過去の産物なのかな?


 夕暮れのオレンジ色した光の筋が、ジョンの右半身を照らしている。
 キラキラ輝いている目には、年老いた人間だけが持つ深い色味を持っていた。


 その六日後。
 夕食を済ませ、紅茶をすすりながら丸テーブルに一人座って、のんびりと、今日着た郵便物のチェックをしようとして、手を止めた。
 "F"からの手紙が混ざっている。タイプライター特有の髭文字だ。
 半ばあきれながら、また、いたずらだろうと、開けると、フレディの字で綴られた手紙が出てきた。
 目を楠って、もう一度文字の筆跡を見る。見違えているわけでは無い。これは紛れも無く彼の字だった。手紙を広げ目を通しはじめた。

 

愛すべき、ダーリン、ジョンへ。
僕はいつも見守っているよ。
たまには僕の事思って音楽作ってくれていると嬉しいな。
君のベースが聴けないのは寂しいけれど、僕の口から出る声を聞けないのも寂しいだろう?
いつか、こちらへ来る時は、子供たちの話聴かせてくれ。
まあ、当分こちらに来そうに無いけれどね。

by,Mr.F


読み終わる頃には、僕の目は涙で霞んでいた。とんでもなく、このスチュエーションが嘘くさく、彼はとうに亡くなったはずだったのに、その亡くなった彼がなぜか、僕のために手紙を出してくれた。そして、それが今ここにある。天国経由で。
落ち着こうと飲んだ甘いはちみつ入りの紅茶は、僕の涙で少ししょっぱかった。


 一通り泣いた後、ジョンは次の日ガーデンロッジに行く事を決心した。
 翌日、まとわりつく様な細かい雨の中、黒い服、黒い傘を差し、黄色い花を片手にガーデンロッジの入り口にジョンは立っていた。


ああ、いろんなプレゼントがあるよ。絵もあれば、花もあるし、ファンの足は途絶えはし無い。

 後ろに居たファンの少女が、黄色い声を上げる。
ジョンが振り返ると、ブライアンとロジャーの二人が、ホッとした様な頬笑みで、こちらを見守っていた。
「ブライアン、ロジャー、久しぶり。」
言い切る前にもう涙腺が緩んでいたジョンは、目に涙を貯めて、挨拶した。
「ジョン、フレディは幸せな奴だよ。ファンに死んでも尚、尊敬され続け、彼の最期の砦は、捧げられた花でいつもいっぱいだ。」
「俺らも幸せだよ。そうだろ?ジョン。」
「うん。彼に代わる人なんかこの先現れっこないくらい、素晴らしい才能を持った人だった。」
互いの肩を抱き合い、3人は今日の空模様と同じように目から雫を垂らしていた。
昼だと言うのに夜の様な真っ黒の空。
そのずっとずっと遠くの空には虹が架かっている。そこにたたずむ人影を、彼等が確認できたかは定かでは無い。
YOU GET THIS MAIL, FROM : HEAVEN...
そう、彼はあの日虹の上に佇んで微笑んでいたんだ。

Fin

 

 

あとがき
これの原形を思いついたのは去年の11月。
小さなクロッキー帳に綴っただけの物でした。
色々書き足したり、減らしたりしましたが、書き終えた時、

他のファンの方にはっ倒されそうだなと苦笑していたりします。

色々自由に書いていますが、もうすぐ成人し、もっといい小説(駄文に近いかな?)

を書ける様努力しようと思っています。
上手くいくか解らないけれど…。
2004 11/9 砂丘。

 

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