第六章

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 ブライアンはようやくリンゴを切り終え、慎重に皿に盛ってから勧めた。
 そのりんごはすっかり黄色くなってしまっていたが、良い香りがするリンゴだった。
「ブライアンお前不器用だなあ。これは枯れかけの白いバラより黄色いぞ!」
「これを押し付けたのは君じゃないか!(激怒)僕は僕なりに頑張ってだなー……は!うわあ、君のせいで印象が崩れてしまったじゃないかー!」
 ブライアンは、呆気にとられて切ったリンゴ片手に動けないジョンを見てがくっと崩れ落ちた。
「どうせ印象ってのはすぐに崩れる物なんだ、気にしてると又胃が痛くなるぞ?」
 くすくす…。ジョンはたまらなくなって笑い出した。
 ブライアンは真っ赤になって、口をパクパクさせ、ロジャーを睨み付けた。
「ブライアン、お前って案外お子さまだなあ。もっと落ち着いた奴だと思っていたのに。インテリ育ちは何を言うのか分からないな。」
 ブライアンはうなだれて、自分で切ったリンゴをかじった。
「で、ジョン、フレディは今市場に行ったとこだ。暫く戻らないが心配しなくて良いぞ。それから、傷は全治2、3週間だそうだ。直ったら俺が剣術を教えてやろうか?」
 少しの間短剣をじっと見て、考えているようだった。
「これ以上迷惑をかけて良いの?」
「別にかまわねえさ。お前の事フレディが気に入っているようだから、俺達が追い出すような事したらアイツに何されるか…。」
「そうだね、フレディは一度気に入ってしまうと情に厚すぎるほど厚いからなあ。」


 その頃フレディは、くしゃみをしていた。
「う〜ん誰か僕の事噂しているのかな?良い噂だと言いけれど…。」
 彼は両手いっぱいに買い物をしていた。と、ちょうど服を出している店の前で目が止まった。
「へいらしゃい!お客さんにはこの派手めな服なんていかがですかい?よく似合うと思いますぜ?」
「すまないけれど、僕の服を買いに来たんじゃないんだ。友達に・さ!」
「そのお友達の方の肌の色は?」
「透けそうなくらい真っ白さ。そして少し鼻と頬と唇がね、薄紅色なんだ。」
「では、これなんかがお手ごろで似合うと思いますが?」
「そうだねえ。じゃあこの上下と、そのマント、それからあの帽子も。…あとは、あ、そのブーツ!」
 フレディのお金を湯水の様に使う癖爆発。そこの主人はフレディにおまけでネックレスを二つオマケする始末。満足してフレディは帰る事にした。


 ドドドドド…

「あれ?何の音?しかも地響きがっ!」
 ブライアンのカーリーヘアが揺れている。
「何だ?奇襲攻撃か?まともに茶も飲めねえじゃんか。」
 ロジャーが飲んでいる紅茶がカップからこぼれそうになる。
「ダムが決壊したのかな?」
 ジョンはちょっと外れた事を言っているが、揺れが傷にひびくらしい。
 

バーン!

「あぁぁああ?」

 荷物の山(フレディ)がドアを蹴破り入って来た。
「ただいまー!」
 そのままブライアンに突撃(ああ、何がなんだか…)。
「はい、ジョン、洋服調達して来たよ!」
「あ、うん。ありがとう。」 
「おお、いつもの調子に戻ったか。良かったな!フレディ。」
「やっぱりショッピングは良いね。楽しいし。」
「そんな事より僕を助けて…。」
 荷物の下敷きになってしまったブライアンは、自力では出て来れないほどひ弱だった。
「しかたねえなあ。ほらよ!」
 頭に色々くっ付けてブライアンは救助された。
「毎度とは言え凄いもんだな。何買って来たんだ?おい。」
「ええと、ジョンに食べさせようと思った此処で一番美味しいケーキ屋さんのケーキでしょ、それからブライアンの好きそうな本、はい、ロジャー煙草。」
「おぅ、サンキュー!」
「わぁ、これ読みたかったんだよね。ありがとう!」
「こんなに貰って良いの?」
「良いの良いの。僕の楽しみの一つだからね。さ、食べなよ」
「じゃあ、フレディ、半分食べてね。僕こんなに食べられないんだ。」
 スススーと、ジョンのとこにフレディが寄って行き、さっと、何処からとも無くフォークを二本取り出して、片方ジョンに渡した。
「ロジャー・ブライアン、そこの山の中にもう一箱ケーキがあるはずだから食べて。新作だってさ。」
「じゃあ、紅茶も入れるか。おい、お前らも飲むだろう?ジョン、お前って紅茶駄目だったよなあ?」
「え?」
 横からフレディに突かれて、ハッと気付く。
「ミルク入りなら今飲めますが…。」
「OK!じゃあロイヤルミルクティーを作ってやるよ。ちょっと待ってな。」
 パチンと、指を鳴らすと召し使いが出て来てお茶のセットを運んで来た。ロジャーは少し自慢げにしていた。

 

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